あなたもすでにご存じのとおり、今年(2022年)の4月1日から、満18歳を迎えた成人であれば、保護者の同意なくAVへの出演契約が締結出来ることになりました。
詳しくは前回の記事をご参照ください。↓
すると案の定、多数の「フェミニスト団体」の方たちは敏感に反応し、すぐに動き出しました。
各政党や政治家に圧力を掛け、あっという間に議員立法の素案がまとまる段階まで進んでいます。
AV対策法の概要
自民、立憲民主など与野党6党は13日、アダルトビデオ(AV)への出演を強要される被害を防止するための新法の素案をまとめた。映像の公表後、出演者側が1年間は無条件で契約を解除できるようにし、制作側には映像の削除や回収などの義務を課すことが柱だ。
6党の実務者が「AV出演被害防止・救済法案」としてとりまとめた。各党内での協議を経て超党派の議員立法として今国会に提出し、成立を目指す。
素案では、制作者側に撮影内容の詳細を書面で交付し、説明することを義務づける。契約から撮影までは1か月、撮影から公表までは4か月の期間を置くことも必要とした。
さらに、契約に問題がなくても、出演者は年齢、性別にかかわらず1年間は契約を解除できるようにする。契約解除で損害が生じても、制作側は出演者に賠償を請求できない。法施行後2年は、経過措置として映像公表から2年間、解除できるようにする。
成人年齢が4月から18歳に引き下げられたことを機に、与野党で新法を検討してきた。
2022/05/14 読売新聞オンライン より引用
上記の要点をまとめると、
- 映像の公表後、出演者側が1年間は無条件で契約を解除できる
- 制作側には映像の削除や回収などの義務を課す
- 制作者側に撮影内容の詳細を書面で交付し、説明することを義務づける
- 契約から撮影までは1か月、撮影から公表までは4か月の期間を置く
- 契約解除で損害が生じても、制作側は出演者に賠償を請求できない
どうですかね、これ。
制作業者にとっては、メチャクチャ不利な条件ばかり並んでいるように見えますよね。
「1」の「1年間は無条件で契約を解除できる」って、新作の発売から1年間は制作者も販売者も枕を高くして寝られないってことです。
仮に契約から364日後にモデルさんから契約解除の申し出をされた場合、その間に売れた映像は「2」の「映像の削除や回収などの義務を課す」っていうわけですが、どうやってネット上から映像を回収するんですかね?
「4」では「契約から撮影までは1か月、撮影から公表までは4か月の期間を置く」ってわけですが、お金に切羽詰まっていてすぐにでも現金が必要なモデルはギャラをもらうのに1ヵ月待たなければいけないんでしょうか。
制作側とモデルの間にモデル・プロダクションが介在しているにしろ、プロダクションが無条件でギャラを前払いするのはリスクしかありませんから、どうしても先にお金をくださいっていうモデルには、そこは何らかの抜け道的な方法で現金を先渡しし、結果的にはギャラを買い叩かれる形となってモデルには不利益にしかなりせん。
契約解除なんてこれまで夢にも考えていなかったほとんどのAV女優たちにとっては、とてつもなく迷惑にしかならない法律です。18歳が成人になったおかげで、とんだとばっちりを受ける形になりますね。
さらに「5」なんて、社会通念上有り得ないほどメチャクチャな条件ですよ。
AV撮影にはモデルのギャラ以外に、脚本家や監督を含めた多数のスタッフの人件費やら撮影場所の確保など諸々の経費がかかるわけです。よほど有名な単体女優を除けば、モデルのギャラよりもむしろその他の経費のほうが高額でしょう。この条件はそういった諸経費の存在を無視していると言わざるを得ません。
予算が500万円の作品で、そのうち女優のギャラが100万円の作品をようやく撮り終えてさあ発売するぞという時、あろうことかモデルから契約解除の通知が届いた。これって無条件で作品を廃棄することになります。
そこでわたしのような下衆な人間はここで良からぬことを想像するわけです。
制作側は契約解除した女優さんに対して相当な恨みを持つでしょうから、もしかするとボツになった作品が『裏ビデオ』として無修正流出する可能性が高くなるのではないでしょうか。恨みもさることながら諸経費も回収しなければなりませんしね。
もしそうなれば、当然そのモデルは二度と業界では生きていけませんし、ましてや無修正映像がネット上に流出してしまったら最後、ネット上でお祭りになることは必至ですから普通の女性としての人生も終わる可能性が高くなります。
例えAVといえども人と人との関係で成り立っているのですから、半ば強制されたような出演契約は別として正当な契約を交わしたうえでの出演であれば、気が変わったから契約を解除するという、お互いの信頼関係を損ねる行為はいかがなものかと思います。
決して「18歳だから気が変わってもやむを得ない」というものではありませんね。
一方、ここで気をつけなければいけないのは、心変わりして契約解除したモデル側は撮影経費などの損害は賠償しなくても良いのですが、出演したギャラは当然ながら返還しなくてはいけません。
制作にかかった損害も賠償しません、ギャラも返還しなくてOKというのであれば、AV出演詐欺の女性が大量に発生してしまいますからね。
「本番行為」を明確に禁じない草案に「フェミニスト団体」が噛みつく
以上のような、あり得ないほど制作側に厳しいAV対策法の草案ですが、これでも不足だとしてフェミニスト団体が下記のような異議を述べています。
アダルトビデオ(AV)の出演被害救済に向け、13日に固まった議員立法の素案が波紋を広げている。問題は、AVを「性行為映像制作物」と定義し、制作に当たっての性行為に実際の性交、いわゆる「本番行為」を含めている点だ。素案に至る経緯の不透明さも懸念に拍車をかけており、被害女性たちを支援してきた団体は「業者を保護する内容で、制作過程の性搾取にお墨付きを与える」と訴え、丁寧な議論を求めている。
「特例法を作って18、19歳はAVに出演できないようにすれば済む話だったはず」。ポルノ被害当事者を支援するNPO法人ぱっぷすの北原みのり副理事長は、困惑する。
成人年齢の18歳への引き下げを翌月に控えた3月、18、19歳が「未成年者取消権」の対象外となり、AVの出演契約が取り消せなくなる問題が浮上した。対応を協議した与野党議員は4月、AVを「人が性交若(も)しくは性交類似行為を行う姿態」の撮影映像などを含む作品と定義する新法骨子案を提示。若者保護のはずが、本番行為を認める内容にすり替わった。
「これでは被害者を救えない」と批判が相次ぎ、今月9日の「AV出演被害防止に関する各党実務者会合」で支援団体などへのヒアリングが行われた。ところが4日後の13日に示された法案は、AVを「性行為に係る人の姿態を撮影した映像」などと修正しつつ、本番行為を明確に禁じなかった。「AVの被害を生むのは性行為なのに。これでは業者を守ることになりかねない」と北原さんは嘆く。
2022年5月20日(金) 12:50 神奈川新聞カナコロ より引用
ご存じのように、国内のAV作品では性器にはモザイクが掛けられています。
性器にモザイク処理をする理由についてですが、かなり前にAV業界の草創期に活躍されたある人物から聞いたことがありまして・・・。
彼によると、そもそもAVにモザイク処理をすることになった当初の目的は「女性器に男性器を挿入している」ことを誤魔化すためだったそうです。
というのは、日本の法律には「売春防止法」というのがあって、簡単にいうと主に女性がホンバン(挿入)行為をしてお金を稼いではいけないことになっているからです。
ですからAVに出演した女優が男優とホンバン行為をしてギャラをもらうと、売春と同じ行為になってしまうわけですね。ましてやAVプロダクションがギャラの中抜きをしているわけですから、売春宿と同じ理屈で「管理売春」に問われかねません。
そこでモザイクが発明される以前は「疑似本番」といって、出演者は陰毛は見えても決して性器を見せないようなお互いに密着した腰の振り方というか演技をしていました。
実は陰毛の解禁以前の作品では、性器の部分にちょうど花瓶や果物どが被さるようなカメラ位置で撮影していましたよ。(笑) おそらく50代以上の方ならモザイクのない疑似本番らしいAV作品をご覧になったことがあると思います。
それがいつしか「モザイク」が「わいせつ」に関する「当局の摘発基準」のような位置付けにすり替わってしまって現在に至るようです。
ところが今度のAV対策法では、上記のようにAVを「性行為に係る人の姿態を撮影した映像」と定義しようしているのでフェミニスト団体が慌てているようです。
なにしろ「性行為」とは挿入を含んでいるわけですから、上記の法案がそのまま施行されれば、正当に契約しモデルが契約解除しなければギャラを払って性行為しても問題ないという法律のお墨付きが与えられることになるわけです。
今国会で成立を目指すと活発に動いているようですが、そんなに急いで作る必要なんてあるんでしょうかね。
単にAV出演の強要を抑制すればいいだけの問題だと思いますが。
逆に法律の抜け道を利用する悪徳業者がはびこる気がしてなりません。
関連のお話はメルマガでも取り上げたいと思います。